身体障害者(視覚障害)の認定基準の矛盾点

身体障害者(視覚障害)の認定基準は下の表の様になっています
これらの基準には実際診療していると実状に合わない場合がしばしばあります

級別 基準
1級   両眼の視力(矯正視力)の和が0.01以下のもの
2級 1.両眼の視力の和が0.02以上0.04以下のもの
2.両眼の視野が10度以内でかつ両眼による視野について
  視能率による損失が95%以上のもの
3級 1.両眼の視力の和が0.05以上、0.08以下のもの
2.両眼の視野が10度以内でかつ両眼による視野について
  視能率による損失が90%以上のもの
4級 1.両眼の視力の和が0.09以上0.12以下のもの
2.両眼の視野がそれぞれ10度以内のもの
5級 1.両眼の視力の和が0.13以上0.2以下のもの
2.両眼による視野の2分の1以上が欠けているもの
6級   1眼の視力が0.02以下、他眼の視力が0.6 以下のもので、
  両眼の視力の和が0.2 を越えるもの

まず不思議なことですが両眼の視力の和と言う部分ですが
両眼を同時に使って見た視力ではありません。

たとえば右眼視力が0.3で左眼視力が0.2の方は単純に足し算して0.5とします。
片眼失明でもう片眼が0.6の方と両眼とも0.3の方は両眼で見ても0.6は見えませんが
基準的には同じ視力と判定されます。まったく変です。

注意書きに両眼同時視での視力ではなく数学的に足し算するとわざわざ書いてあります。

生活上でどの位困ってるかを基準に身体障害者の認定と言うことは
なされて当然と思いますがそうじゃないんですよねぇ???

そして、判定基準どおりですとこんな矛盾点もあるんです

両眼がそれぞれ0.2で単車(原付)の免許証がもらえない方は6級にもなりません
1眼の視力はどちらも0.02以下じゃないからです。そしてバイクには乗れず
移動するにはバス等が必要ですが身体障害者手帳はもらえず普通のバス料金です

一方、片眼失明で他眼が0.6の方は6級に当てはまり身体障害者手帳をもらえますが
バイクの免許ももらえて単車の運転も可能です。でもバス代は半額になります。

このように基準がおかしいところはたくさんあるのですが身体障害者の認定資格を
もらってる医師が勝手にこの方は実際に困ってるからと決めることはもちろん出来ません

そこで私の出来ることは。。。2003年7/26、27日に神戸であった眼科講習会で
そこの講師として来ておられた慶応義塾大学眼科の小口芳久教授に質問の形で
お願いしてきました。この方は厚生労働省の身体障害者基準改定などの委員会のメンバーです。

つまりこのような決まりを改訂出来る方のおひとりでした。小口先生も矛盾点はたくさんあるし
なぜ数学的に視力を足し算する様なことが決まりになってるかもわからないと言われていました

1人の町医者でも出来ることはあると、そこで矛盾点や日頃の臨床で感じてることを具体的にお話しし
次回の改訂での変更をお願いしてきました。その様な臨床の第一線での声を
大事にしたいとうれしい言葉をもらって帰ってきました(^^)

次の身体障害者基準の改定は何時になるかわかりませんがその時には矛盾のない
実際困っている患者さんの程度に相当した認定が出来るように変わってくる事を期待しています。

2003.08.31 記