工作道具を角膜異物除去術に使用中です

角膜異物除去(黒目の上の異物をとる)はしばしば診療中にすることです。良くあるのは

鉄粉が入った場合です。多くの方が1晩我慢してから来たりするので、けっこう角膜にさびが

出てしまってることも多いのです。そうなると鉄の粉を取っただけでは傷が治らないので

鉄粉除去後に残ったさびを小型のドリルで削り取ることになります。

私も最初は、医療用具を使用していました。電源は単3乾電池1本です。

外国製の物と国産の物を使ってきました。下の写真の物です。



この2本がむかし使っていた医療用具の角膜ドリル本体です。この先端に小さなドリルをつけて使用します。

これらの価格は、上のGrieshaber社(スイス製)の物が12万円以上、下の国産でも10万ちょっとしたと思います。

眼科医ならGrieshaber製品をまず何かひとつ位は使ったことがある有名な会社です。しかし、私の知る他の

道具はけっこう耐久性良いですが、このドリルは使用頻度は低いのにしばしば動かなくなるのです。

しかたなく国産の下の物を購入しました。これも最初は調子よく、しかも左右逆回転できるのでお気に入りで

使ってきました。しかし1年もしない内に、またあまり動かなくなってしまい、いざ角膜異物の患者さんが

来たと言うときに、なかなか動かなくてひやっとしたことも何回もあったのです。


さて、前々回の独り言No.318 自分で作った診察用具を紹介しますの中に医療用具じゃない物を

診療に使ってることもありますと書いたのですが、これがその1例です。

http://www.toyoas.jp/site/products/mm/hp200s_hp300/hp200.html
(上記のLINKは何か特殊な設定がしてあるようです。一回目のクリックでは
製品の紹介ページが開かずこの製造元の会社のTopページに行ってしまいます。
私には、そこまで詳しい知識が無くて仕組みは?です。いったん閉じて
再度クリックしたらそのページに行けます。あるいは初回に開くページから
ハンドピースグラインダーHP-200SをみつけてクリックしてもOKです)

上記にある工作用のドリルが、現在は当院の角膜のさび取り用ドリルになっています。

これも学会で東京に行ったときに秋葉原の電気街を歩いていて眼にとまった物でした。

元々あった医療用のさび取りドリルの先はそのまま使用可能です。



ご覧のようにドリルの電源部分は常時診察机の上にあります。そして必要時にはハンドピースを

机の引き出しの中から出してきて使用しています。これは医療機器ではありませんがフットスイッチも

標準でついてきますし、左右両方向に回転OKで、医療用のドリルよりもはるかに安定して

回転してくれるし、回転数も微調整できてすばらしい物です。しかも価格は3万円台

いったい医療器械の価格って何なんだと言う気になりますね。今までいざ使おうと思ったときに

動かなかったなんて事は皆無です。元々の医療用ドリルよりはるかに高信頼性です。

http://www.toyoas.jp/site/products/mm/pta/pta.htm ←このぺんタイプも良いかもですね。
(LINKについての雑記は先のと同じです)

さて、これを読んだ方で医療器械じゃない物を使ってその様な医療行為をしても良いのかと

疑問に思った方もあるかもですね。法的にはこの器械で私が個人的に医療行為をする分には

問題はありません。しかしこの器械を医療用具として販売すると販売は違法行為になります。

あくまで個人の医師が自分の責任で使っていく分には法的な問題はないのです。


たとえば、そんな先生は居ないと思いますが整形外科医が骨を切る手術に医療用具ではなくて

大工さんの道具のノコギリが気に入ったのでこれで手術しようと言うのもOKなのです。


また医師が国内では医療機器として認められていない外国の医療機器を個人輸入して

自分の責任で使うこともOKです。良くその様なことはされているのですよ。

2006.06.25 記